叔母をみとる 第5話 土地を買う

父の3回忌から間も無くして、ふみ子から電話があった。ちょっと相談があると言うのでその週末に叔母のふみ子夫婦の家に出かけていった。

「先だっての法事はお天気もよく、長閑かな感じで執り行われて、これも来てくださった皆さんのおかげだと思うよ。」とお礼を言うと、叔父たちは「お前もこれで父を亡くしてしまって淋しいだろう。これからは何でもこの家に相談においで。」と優しく言ってくれた。

「それから自分達にも子供がいなものだから、ちょっと困ったことができた。それで来てもらったんだが・・・」と、本題が始まった。

叔父の家がある一帯は関東大震災で焼け出された人たちのために新たに設けられた、当時の新興住宅地域だそうで、今でも多くの土地は元々この地域を持っていた数人の地主のものだという。

叔父のところも、先代から引き継いだ1階が店で2階が住まいの古い家は、地域の大地主であるお寺からの借地である。また、この先の路地を入ったところに先代が亡くなってから建てた新たな家の土地も、別の大地主からの借地であった。

こちらの新宅の土地一帯は元々は縦に長く3筆に別れていた土地を人々が借りやすいサイズと地型で、適当に分割して貸し出したようで、この縦長の土地に建ったそれぞれの家主には3人の地主がいるわけだ。

叔父は、このうち2人の地主からは、新宅を建てるころに相続が発生したため、購入することができたそうで、現在、新宅の土地は、一部分が3人目の地主のもので、一部が叔父のものとなっているそうだ。

さて叔父は「そろそろお前のお父さんが言っていたように、二つも家があっても、結局は受け継いでくれるものもいないので、売ろうと考えている。」と言った。私はそれを聞いて、父の思いを理解してくれたんだと思い、ほっとした。

しかし、地元の信用金庫に相談したところ、借地のままでは売りにくいので、一旦購入して販売するように勧められたというのだ。

私もそれはその方がいいだろうと思ったので、地主に販売の意向があるのかを確認すると、やはり今回も相続が発生したので、売りたいと言われたそうだ。

だったら迷うことはないと、相談にのっているつもりの私は、叔父と叔母に購入をすすめた。

すると、叔父は、不安だから現金で購入したくはないというのだ。叔父と叔母は同じ年夫婦なので、父とは2つ違い。父の急死をとってみても、もしも何かあった際に、すぐに現金が手元にないのは不安だという気持ちになったという。

地元の信用金庫は、連帯保証人の審査が通れば、貸付は可能だと言ったそうだ。その連帯保証人を私に頼みたいという相談だった。

金額は1000万円。

借り入れをしてまで購入するのならば、この土地はどのくらい買い手がつきそうなのかを検討したのかと、私はもう一つ、質問を投げてみた。

すると叔母が、「ちょっと前に、近くの警察官のお母さんが売ってくれないかと言ってきたけど、その時は売るつもりもなかったんで断ったんだよ。他にも売ってくれないかと聞かれたことがあるよ。」というのだ。

それを聞いて、まったく売れそうにない物件。というわけではないかもしれないが、この二人には、買うことも売ることもできないんだな。と私は考えてしまった。

そして、私にも家族がいる、それに叔母のふみ子には本家を預かる弟(私から見た叔父)もいる。この話は、一旦持ち帰って皆んなに相談することにして、その日はふみ子の家を後にした。

インディーズ文庫 代表 紀中しのぶ

そろそろ父の日!これを書いていると父を思い出します。
コロナ中の今、生きていたら旅行に行きたがるでしょうね。
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