老舗の和菓子屋さんが老舗を守れなくなる危機
関西方面のある観光地にその和菓子屋さんはある。数年前までは両親も健在で跡を取った長男は父と一緒に和菓子作りに励んでいたのだが、ここ数年の間に両親が続けて他界してしまった。兄妹に手伝ってもらったりしながら、町を隔てての2店舗を経営してきたのだが、借金が嵩んでしまい、最近になって本店のみの経営になった。
私の通常のフィールドは関東とそれより北であり、関西方面は珍しいので、この話を聞いた時には、関西の観光地情報が不足してしまうのではないかと不安を感じたのだが、詳しく聞いてみると、地域に関わらず観光地としての共通点が見えてきた。
有名な社寺がある大きな観光地の食べものの老舗の場合、江戸や明治のころから献上品を作っていることが多く、その商品が地域的な名物とされている場合がある。一方、そこまで重々しくない店舗の場合は、次々に観光客相手の土産品で新製品を出して、大きな観光センターのような形の店舗になっている場合も見かける。
前者の場合は、有名な社寺でのお茶会や老舗旅館への納めの品が定期的にあるだろう。また後者の場合は団体旅行の立ち寄り施設に利用されたり、ホテルなどの土産物コーナーにも品物が納められるだろう。
さて、今回の老舗はそのどちらのも当てはまらない。和菓子屋と言っても少しハイカラなカステラなども提供する地元ユーザー向けの店舗だったのだ。
さて、どうしたものか?プラスのアイディア
お茶会や旅館で扱ってもらえるか?…というと、時代がいい時は寺の多い観光地なだけに、お茶会などもあちこちで開かれ、おはちがまわって来たかもしれない。しかし、今はデフレの時代だ。そんな上菓子は毎回はお目にかかれまい。そうなると観光情報誌にも名物商品が載っているような有名店が残るのだ。
そうかと言って、○○○観光センターのように、次々と話題のお土産商品をたくさんの観光客に提供していくところとも闘えまい。
そこで3つの戦略をお話ししよう!
地元ユーザー向けの店舗なだけに、店舗の規模に比べて品数が多い。ある程度の洋菓子も揃っているのだ。そして全体にレトロな雰囲気である。これは如何にも現代人が懐かしいと感じる素晴らしさなのだ。その店のイメージと商品を生かすことを考えてみよう。
(1)愛され続けている名物商品(たとえばロールケーキとしよう)を徹底してアピールするのだ。しかも町の人だけではなく、観光客にもだ。WEBのブログで季節の周辺観光情報とともに、この名物ロールケーキをアピールしてみよう。また町で開催される観光客の来場も見込めるようなイベントにはできるだけ参加して、観光客に菓子を配るのだ。何かのプレゼント商品などに割り当ててもらうのも望ましい。
(2)ある程度、名物ロールケーキが浸透したら、ホテルなどのお土産売り場に一日限定10本とか、小個数の限定商品として置いていただけるように交渉しよう。
(3)そのころには店舗独自のホームページも作成してネット直販も視野に入れた展開が良いだろう。限定商品を購入した人はネットユーザーとしてリピーターになる可能性も十分に考えられるのだから。